ぬるく なっ た 麦茶。 夏になったので去年買ったサーモスの保冷缶ホルダーをまた使い始めたら、やっぱり良かった話

車内ですぐぬるくなってしまう飲み物を、いつでも冷たく飲める「車載用温冷ドリンクホルダー」が良さげ^^

ぬるく なっ た 麦茶

「あっつ……」 ホテルの一室で樋口楓は不機嫌そうな声をあげる。 温度計こそ無いものの、室内の温度は二十八度を超えているのは分かりきっていた。 それに加えてホテル特有の湿度が不快指数を跳ね上げており、いっそ水中にでも居たほうが快適なのではないかと楓は考え始める。 せっかくの一人一部屋のシングルベッドなのに、これでは安いビジネスホテルと変わらない。 「なあ美兎ちゃん。 うちらバーチャルの住人で良いんだよね。 暑さとは無縁で、管理された空間で過ごす快適な旅」 「建前はそうなってるね。 まあ建前は」 「建前はね。 それなのにさ。 なんでこんな状況なの」 楓はまとわり付いてくる髪を乱暴に剥がすと、ベッドの上でわけもなく転がり始める。 同じベッドに座りつつ団扇を仰ぐ月ノ美兎はその光景を苦笑いしながら眺めていた。 「しょうがないって、地方公演なんだから。 あたしたちも移動て現地で配信しないとラグで違和感が出ちゃうから」 「いや、まぁ。 それは分かるよ。 別に地方公演が不満ってわけじゃないよ。 色んな場所へ行けて楽しいから」 「なら良いじゃん。 その楽しみを、享受しようよ」 「できるか! こちとら貴重な夏休み中なのにさ、停電でエアコン付かないとかマジで何なん!?」 楓が雄叫びをあげるのも無理はなかった。 ホテルの電気系統の故障で、よりにもよって客室が全部停電。 復旧は二十分程で完了するらしいが、本日は生憎の猛暑日。 外に出て太陽に照らされるよりかは室内に居る事を選択した楓だった。 だが、その判断が裏目に出る。 蒸し風呂状態になった部屋で過ごせば過ごすほど体力は削られ、気力は苛立ちへと昇華していく。 もし美兎が楓の部屋に来るのがあと一分遅ければ、メルティメープルとなった彼女で世界は地獄絵図になっていたかもしれない。 「というか、美兎ちゃん何しに来たの」 「いやぁ。 炎天下のなか外に出るの嫌で、暇人おるかなって来たらビンゴった」 「暇人と思われてるのは心外やわ。 凛先輩には声かけたん?」 「楓ちゃんの部屋に行く前に一声かけたよ。 そしたら」 『私は涼みがてら、新鮮な腹筋を漁りに行ってきますので。 すぐには戻りませんから』 「へえ。 ものまねのクオリティ上げたなぁ」 「でしょ。 もうそろそろ次のステップに進んでもいいかなって思ってる」 凛の奇行か、はたまた美兎の捏造か。 どちらにせよ楓には突っ込む気力すら無かった。 「こんな事なら、暑いの我慢して私も外のコンビニに避難しとくべきだったなあ」 「楓ちゃん暑いの苦手?」 「どっちかと言えば嫌い。 髪の中にな、熱が籠もるからむっちゃ暑い」 美兎の表情に悪魔が宿った。 団扇をそっと置いて、ベッドに顔を埋めている楓へ手を伸ばす。 楓は自身の首筋に生暖かい物体が触れたことに驚き、思わずベッドから飛び上がった。 見れば悪戯っぽい笑みを浮かべながら首筋を揉む美兎の姿。 この時はさしもの彼女もすぐには言葉が出なかった。 「本当だ。 首周りが地味に暑いね」 「……ちょっと! いきなり手を差し込まないで、びっくりするから!」 「えっ じゃあ頼んだら手を入れさせてくれるの」 「入れさせない! まったく、暑いのに元気やなこの兎は」 楓は呆れ返りながら溜め息を吐くと、美兎は名残惜しそうに首筋から手を引っ込めた。 「というか暑くないの、そんなアクションしてさ。 私とかもう汗やばいんだけど」 「ああ、あたしね、平均体温が高いほうだから。 なんというか暑いのは慣れてる的な」 「そんなんあるの、羨ましい。 もしかして私が暑さに弱いの冷え性だからかな」 「サラダとか生野菜ばっか食べてるからだって。 あーでも確かに、私の首周りより楓ちゃんのが冷たかった気がする」 「美兎ちゃん黒髪だから熱をよく吸収する、みたいな」 「ちょっともう一回触らせて。 比べてみたい」 「やだ! そんなに涼みたいなら飲み物あるから、それで我慢して!」 美兎の手から逃れるように楓は立ち上がると、部屋の隅に置いてある冷蔵庫の扉を開けた。 チェックイン直後に忘れずスイッチを入れたいたからか、冷気はいまだ保たれていた。 「よかった、まだ冷蔵庫まだ冷えてる。 氷も残ってた。 持ってきたペットボトルの茶で良いよね」 「それでいいよ。 楓ちゃんに任せた」 「分かった。 あ、麦茶に塩とか入れる?」 「なにそれ……理科の実験でもするの」 「夏場に体力作りするとき、顧問の先生が作ってきてくれるの。 正直、味は微妙」 「微妙と思うものを勧めないでよ。 あー……でも、気になるからちょっと作ってみて」 「本気で言ってる、それ?」 怪訝そうな表情でグラスへお茶を注ぐ楓を見て、美兎は小さく笑った。 この光景をどこかで見たことがある。 普段ならデジャヴと片付けるぐらい些細な場面だが、あいにくとこれは二人にとって忘れられない日の情景とよく似ていて、思わず口に出さずにはいられなかった。 「前もさ。 こんな感じで紅茶を淹れてくれたよね、楓ちゃん」 「ん。 そうだね。 あの時は後ろに美兎ちゃんの超会議が控えてるっていう、まさに決戦前夜って感じ」 「こうやって二人で隣り合わせに座って、配信しながら、カルビ弁当を食べつつ紅茶を」 「私は食べてないけどね、カルビ弁当は」 「ゼリー飲んでたね。 じゅるって」 「咀嚼するじゃないですかぁ、はいどうぞ」 「ソシャクスルジャナイデスカァ。 ありがと」 ベッドの横にあるサイドテーブルへグラスが一つ置かれる。 これはもちろん美兎の分。 運び終えた楓は元の位置、美兎の隣へとグラスを持ちながら移動した。 「というか、ほんまに暑い。 どれくらい時間経った?」 「まだあたしが来てから五分も経ってないよ。 堪え性無さすぎ楓ちゃん」 「ああ、いやもう。 これ飲んだら下の階へ行こうよ、無理無理。 目を丸くして驚く楓を横目に、美兎はそのままグラスを奪うと、サイドテーブルにある自身のグラスの隣へ並べた。 楓が文句を言おうと口を開きかけた時。 美兎の視線が、隣に座っている楓の瞳に向けられている。 この場合、会話の前後で察して欲しいという意思が込めれている場合が多い。 だが、今度のは楓にとって全く分からない。 美兎が何を伝えようとしているのか、何を訴えているのか見当がつかないでいる。 そんな状況下で彼女の取る行動は一つ。 向けられる視線から逃れるように顔を逸らした。 その瞬間、楓は後ろへ押し倒される。 倒された痛みこそ無いが、彼女のほぼ眼前に美兎の顔がある。 その方が楓にとって衝撃は大きかった。 「ちょ、み、美兎ちゃん。 暑いし、ふざけるのは、誰か来たら勘違いされるし」 「しずりん先輩には、停電の間は出かけてるって言ってあるから。 しばらくこっちには来ないよ」 「出かけるって……それって私の部屋にって事? それとも別のところに」 「そうじゃないけど。 まぁそれでも別に間違ってはないか。 楓ちゃんの好きなように解釈して」 「……最初から、そのつもりで部屋に来たんやな。 ほんま、二人っきりになるといつも」 「良いでしょ。 久しぶりに本当に二人っきりなんだから。 その間に暑さは増したように思え、美兎から滴る汗の一滴が、Yシャツの第一ボタンまで開けていた楓の胸元へと落ちる。 それが合図となったかのように、楓は口を開いた。 「それに、の後ろはなに?」 「続きを言わせたいの楓ちゃん」 「一応、聞くだけ聞いておく。 後できちんと証言しないといけないから」 「暑さで火照ってる楓ちゃんが、さっきからすっごく可愛くて。 我慢できない」 「……色ボケうさぎ。 自分だって今の顔を見てみ、すっごい赤いで」 美兎は、楓の瞳に映し出される自身の顔を見た。 前髪が汗で額へ張り付き、頬は同じく暑さで紅潮し、呼吸は浅く荒れている。 これを暑さのせいだ、などと美兎は言い訳しようとしない。 だが、目の前に居る貴女を愛したくてとも言わない。 言ったら最後、楓はそれどころでは無くなってしまうだろう。 ならば楽しみは最後に取っておいたほうが良い、との判断だ。 「楓ちゃん」 滴り落ちる汗の雫が数を増し、楓のはっきりと浮き出ている鎖骨に薄く溜まる。 もっとも、それは美兎のだけではなく、首筋から流れてきた楓の分も含まれている。 その部分へ、美兎は強めのキスをした。 キスの間、楓は声をあげないよう必死に口を手で抑えている。 それが彼女に残された僅かなプライドだった。 数十秒後。 彼女の白い肌に、痕が赤くはっきりと残る。 美兎は満足そうに眺めたあと、紅い証を撫ぜながら尋ねる。 「いいよね」 楓からの返事はない。 だが、口を抑えていた手を美兎の首の後ろへと回す。 いきなり痕を付けられたことへの反発心、これからへの期待、様々な感情で溢れた目をゆっくりと瞑った。 それが彼女に出来る精一杯の合図であり、声のない答えだった。 この前も、今も、その次も全て同じ答えだろう。 麦茶で満たされている二つのグラスの中で、氷が澄んだ音を立てた。

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夏になったので去年買ったサーモスの保冷缶ホルダーをまた使い始めたら、やっぱり良かった話

ぬるく なっ た 麦茶

ナルゲンボトルは冷凍できる? 夏のものすごく暑い時期は熱中症対策として、どこに出かける時も常にナルゲンボトルに飲み物を入れて持ち歩いています。 私が住んでいるセビリアの夏はとても暑く、冷蔵庫に入れておいた水や麦茶でもすぐにぬるくなってしまうので、 ナルゲンボトルに麦茶を冷凍して持っていきます。 ナルゲンボトルが公式で発表している耐冷温度は、ボトルが マイナス20度でキャップが0度まで。 冷凍庫でマイナス20度までは冷えないだろうから、ボトルは問題ナッシング。 冷凍庫は0度よりは低いだろうからキャップの耐冷は超えていますが、今のところトラブルは起きていません。 ナルゲンボトルを冷凍させるときの注意点は、 満杯まで冷凍させる飲み物を入れないこと。 なぜかと言うと、• 膨張して破裂しそうになる• ナルゲンボトルで飲み物を冷凍させるときは、 9割くらいまでの分量で留めておきましょう。 ナルゲンボトルは熱湯もOK? ナルゲンボトルが公式発表している 耐熱温度は100度なので、熱湯も可ということ。 私は冬の時期は熱いお茶類を入れます。 ナルゲンボトルは水筒代わりとしての使い方ができますが正式な水筒ではないし、魔法瓶ではないので保温機能はありません。 しかし、ナルゲンボトルに熱湯(または熱いお茶)を入れていると、なかなか温度が下がらず冬でも1時間くらいは温かいものが飲めます。 裏を返すと、 ナルゲンボトルに熱湯を入れて10分〜15分は、飲もうとしても熱すぎて飲めないということ。 飲む前に蓋を開けておくなどして冷ましましょう。 ナルゲンボトルの購入時に悩むのはサイズ選びとキャップ 日本でナルゲンボトルを買う時、まずボトルの サイズ選びに迷いました。 ナルゲンボトルを1日持ち歩くことを考えると1リットルのサイズが必要な気もするけど、ちょっと大きすぎだし重いかなと思って 500mlと 380mlの2本のサイズを買いました。 ピンク好きな私が買ったのは、下記2つのサイズのピンクボトル。 実際のピンクはかなり明るいピンクです。 キャップなしでナルゲンボトルをしばらく使ってみて、私はがぶがぶ飲んじゃうのでいらないなと思いました。 ナルゲンボトルは 中の飲み物が結構ドバーっと出てくるので、お上品な方はキャップあった方がいいかも。 ナルゲンボトル(Nalgene)の魅力は機能性 日本でも会社へ水筒を持って行く派だったので水筒はいくつか試したのですが、最終的にナルゲンボトルに落ち着きました。 ナルゲンボトルを選んだ大きな魅力は、 軽さと機能性です。 ナルゲンボトルは軽い ナルゲンボトルは、 とても軽いです。 500mlのサイズで重さは90g、飲み物を入れても普通の水筒より軽い。 液体を水筒に入れて持ち歩くと結構な重量で肩に負担がかかるので、ナルゲンボトルのように ボトル自体が軽いのはかなりのメリットです。 毎日持ち歩くものだから、少しでも軽い方が良いに決まってる! ナルゲンボトルはにおいがうつらない ナルゲンボトルは通常の水筒と違ってゴムのパッキンがないので、 ゴムのにおいが飲み物にうつらないです。 ゴムパッキンがある水筒だと、どうしても飲み物にゴムのにおいがついてしまう。 そして、ゴムのところにも飲み物のにおいなどが染みてしまいます。 シリコンの水筒を使った時は、シリコン臭が飲み物にうつってしまってとーってもまずかったです。 米のとぎ汁や重層でシリコン臭がとれると口コミにありましたが、そんなことはありませんでした。 ナルゲンボトルは 飲み口にゴムパッキンがないので、飲み物にゴムのにおいがうつりません。 飲み物そのものの味を飲めるのがこんなに喜ばしいこととは! ナルゲンボトルは丈夫 私はナルゲンボトルを何度も床に落としていますが、今のところ割れる気配はありません。 ナルゲンボトルは 丈夫なのです。 今もってるnalgeneボトル、ふと思えば10年近く使ってる。 丈夫だなぁ。 — Nao kamenao 中には10年選手のナルゲンボトルもいるようです。 アウトドア用で作られたナルゲンボトルだから、とても丈夫に作られているんですね。 ナルゲンボトル(Nalgene)の洗い方 ナルゲンボトルは普通に洗おうとすると、ボトルの奥まで届かなくてなかなか洗いにくいです。 普段はナルゲンボトルを、水筒などを洗う長いスポンジで洗っています。 それでも麦茶を入れていると、茶渋がついてしまってきれいにならないことがあります。 長いスポンジだけだと、なんだかボトルの底が不衛生な気もするし…。 そんなナルゲンボトルの おすすめの洗い方があります。 お米を使ったナルゲンボトルの洗い方 ナルゲンボトルのおすすめの洗い方、それは 米を使ってナルゲンボトルを洗う! 米を使ったナルゲンボトルの洗い方は、 ボトルに米と少量の水を入れ、シャカシャカ振るだけ。 ボトルの底についた茶渋とかもきれいに取れます。 あら簡単。 っつーことでたまに米を使って洗うことにしました。 ナルゲンボトルの 蓋の溝に茶渋がついてしまった時は、綿棒を使ってきれいにしています。 蓋の溝が狭いので綿棒がかわいそうな体勢になりますが、ナルゲンボトルをきれいにするためには致し方ない。 場所を取るけど、1リットルのナルゲンボトルも前日に冷凍庫に入れて冷凍します。 朝に冷凍庫から出しておくと、飲む頃には徐々に氷が解け始めていい感じです。 フラメンコのクラスが2つ続く時は、1リットルのナルゲンボトルじゃないと飲み物の量が足らない。 確実に飲みきってます。 ナルゲンボトル(Nalgene)は普段使いの水筒におすすめ! 夏の暑い日には前日にナルゲンボトルに飲み物を入れて、そのまま冷凍庫にボン。 翌日に凍ったナルゲンボトルを持って出かけます。 冬は熱いままお茶をナルゲンボトルに入れて、外でも温かい飲み物を飲んでいます。 ナルゲンボトル、すごく使える奴。 ナルゲンボトルは洗い方も簡単だし、何より丈夫で長持ちし、軽いのが良いです。 というわけで、 機能性の高い水筒で上手に節約したい人は、ナルゲンのカラーボトルを是非チェックしてみてください。

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麦茶は淹れてから24時間以内に飲まなくてはいけない|ニフティニュース

ぬるく なっ た 麦茶

「あっつ……」 ホテルの一室で樋口楓は不機嫌そうな声をあげる。 温度計こそ無いものの、室内の温度は二十八度を超えているのは分かりきっていた。 それに加えてホテル特有の湿度が不快指数を跳ね上げており、いっそ水中にでも居たほうが快適なのではないかと楓は考え始める。 せっかくの一人一部屋のシングルベッドなのに、これでは安いビジネスホテルと変わらない。 「なあ美兎ちゃん。 うちらバーチャルの住人で良いんだよね。 暑さとは無縁で、管理された空間で過ごす快適な旅」 「建前はそうなってるね。 まあ建前は」 「建前はね。 それなのにさ。 なんでこんな状況なの」 楓はまとわり付いてくる髪を乱暴に剥がすと、ベッドの上でわけもなく転がり始める。 同じベッドに座りつつ団扇を仰ぐ月ノ美兎はその光景を苦笑いしながら眺めていた。 「しょうがないって、地方公演なんだから。 あたしたちも移動て現地で配信しないとラグで違和感が出ちゃうから」 「いや、まぁ。 それは分かるよ。 別に地方公演が不満ってわけじゃないよ。 色んな場所へ行けて楽しいから」 「なら良いじゃん。 その楽しみを、享受しようよ」 「できるか! こちとら貴重な夏休み中なのにさ、停電でエアコン付かないとかマジで何なん!?」 楓が雄叫びをあげるのも無理はなかった。 ホテルの電気系統の故障で、よりにもよって客室が全部停電。 復旧は二十分程で完了するらしいが、本日は生憎の猛暑日。 外に出て太陽に照らされるよりかは室内に居る事を選択した楓だった。 だが、その判断が裏目に出る。 蒸し風呂状態になった部屋で過ごせば過ごすほど体力は削られ、気力は苛立ちへと昇華していく。 もし美兎が楓の部屋に来るのがあと一分遅ければ、メルティメープルとなった彼女で世界は地獄絵図になっていたかもしれない。 「というか、美兎ちゃん何しに来たの」 「いやぁ。 炎天下のなか外に出るの嫌で、暇人おるかなって来たらビンゴった」 「暇人と思われてるのは心外やわ。 凛先輩には声かけたん?」 「楓ちゃんの部屋に行く前に一声かけたよ。 そしたら」 『私は涼みがてら、新鮮な腹筋を漁りに行ってきますので。 すぐには戻りませんから』 「へえ。 ものまねのクオリティ上げたなぁ」 「でしょ。 もうそろそろ次のステップに進んでもいいかなって思ってる」 凛の奇行か、はたまた美兎の捏造か。 どちらにせよ楓には突っ込む気力すら無かった。 「こんな事なら、暑いの我慢して私も外のコンビニに避難しとくべきだったなあ」 「楓ちゃん暑いの苦手?」 「どっちかと言えば嫌い。 髪の中にな、熱が籠もるからむっちゃ暑い」 美兎の表情に悪魔が宿った。 団扇をそっと置いて、ベッドに顔を埋めている楓へ手を伸ばす。 楓は自身の首筋に生暖かい物体が触れたことに驚き、思わずベッドから飛び上がった。 見れば悪戯っぽい笑みを浮かべながら首筋を揉む美兎の姿。 この時はさしもの彼女もすぐには言葉が出なかった。 「本当だ。 首周りが地味に暑いね」 「……ちょっと! いきなり手を差し込まないで、びっくりするから!」 「えっ じゃあ頼んだら手を入れさせてくれるの」 「入れさせない! まったく、暑いのに元気やなこの兎は」 楓は呆れ返りながら溜め息を吐くと、美兎は名残惜しそうに首筋から手を引っ込めた。 「というか暑くないの、そんなアクションしてさ。 私とかもう汗やばいんだけど」 「ああ、あたしね、平均体温が高いほうだから。 なんというか暑いのは慣れてる的な」 「そんなんあるの、羨ましい。 もしかして私が暑さに弱いの冷え性だからかな」 「サラダとか生野菜ばっか食べてるからだって。 あーでも確かに、私の首周りより楓ちゃんのが冷たかった気がする」 「美兎ちゃん黒髪だから熱をよく吸収する、みたいな」 「ちょっともう一回触らせて。 比べてみたい」 「やだ! そんなに涼みたいなら飲み物あるから、それで我慢して!」 美兎の手から逃れるように楓は立ち上がると、部屋の隅に置いてある冷蔵庫の扉を開けた。 チェックイン直後に忘れずスイッチを入れたいたからか、冷気はいまだ保たれていた。 「よかった、まだ冷蔵庫まだ冷えてる。 氷も残ってた。 持ってきたペットボトルの茶で良いよね」 「それでいいよ。 楓ちゃんに任せた」 「分かった。 あ、麦茶に塩とか入れる?」 「なにそれ……理科の実験でもするの」 「夏場に体力作りするとき、顧問の先生が作ってきてくれるの。 正直、味は微妙」 「微妙と思うものを勧めないでよ。 あー……でも、気になるからちょっと作ってみて」 「本気で言ってる、それ?」 怪訝そうな表情でグラスへお茶を注ぐ楓を見て、美兎は小さく笑った。 この光景をどこかで見たことがある。 普段ならデジャヴと片付けるぐらい些細な場面だが、あいにくとこれは二人にとって忘れられない日の情景とよく似ていて、思わず口に出さずにはいられなかった。 「前もさ。 こんな感じで紅茶を淹れてくれたよね、楓ちゃん」 「ん。 そうだね。 あの時は後ろに美兎ちゃんの超会議が控えてるっていう、まさに決戦前夜って感じ」 「こうやって二人で隣り合わせに座って、配信しながら、カルビ弁当を食べつつ紅茶を」 「私は食べてないけどね、カルビ弁当は」 「ゼリー飲んでたね。 じゅるって」 「咀嚼するじゃないですかぁ、はいどうぞ」 「ソシャクスルジャナイデスカァ。 ありがと」 ベッドの横にあるサイドテーブルへグラスが一つ置かれる。 これはもちろん美兎の分。 運び終えた楓は元の位置、美兎の隣へとグラスを持ちながら移動した。 「というか、ほんまに暑い。 どれくらい時間経った?」 「まだあたしが来てから五分も経ってないよ。 堪え性無さすぎ楓ちゃん」 「ああ、いやもう。 これ飲んだら下の階へ行こうよ、無理無理。 目を丸くして驚く楓を横目に、美兎はそのままグラスを奪うと、サイドテーブルにある自身のグラスの隣へ並べた。 楓が文句を言おうと口を開きかけた時。 美兎の視線が、隣に座っている楓の瞳に向けられている。 この場合、会話の前後で察して欲しいという意思が込めれている場合が多い。 だが、今度のは楓にとって全く分からない。 美兎が何を伝えようとしているのか、何を訴えているのか見当がつかないでいる。 そんな状況下で彼女の取る行動は一つ。 向けられる視線から逃れるように顔を逸らした。 その瞬間、楓は後ろへ押し倒される。 倒された痛みこそ無いが、彼女のほぼ眼前に美兎の顔がある。 その方が楓にとって衝撃は大きかった。 「ちょ、み、美兎ちゃん。 暑いし、ふざけるのは、誰か来たら勘違いされるし」 「しずりん先輩には、停電の間は出かけてるって言ってあるから。 しばらくこっちには来ないよ」 「出かけるって……それって私の部屋にって事? それとも別のところに」 「そうじゃないけど。 まぁそれでも別に間違ってはないか。 楓ちゃんの好きなように解釈して」 「……最初から、そのつもりで部屋に来たんやな。 ほんま、二人っきりになるといつも」 「良いでしょ。 久しぶりに本当に二人っきりなんだから。 その間に暑さは増したように思え、美兎から滴る汗の一滴が、Yシャツの第一ボタンまで開けていた楓の胸元へと落ちる。 それが合図となったかのように、楓は口を開いた。 「それに、の後ろはなに?」 「続きを言わせたいの楓ちゃん」 「一応、聞くだけ聞いておく。 後できちんと証言しないといけないから」 「暑さで火照ってる楓ちゃんが、さっきからすっごく可愛くて。 我慢できない」 「……色ボケうさぎ。 自分だって今の顔を見てみ、すっごい赤いで」 美兎は、楓の瞳に映し出される自身の顔を見た。 前髪が汗で額へ張り付き、頬は同じく暑さで紅潮し、呼吸は浅く荒れている。 これを暑さのせいだ、などと美兎は言い訳しようとしない。 だが、目の前に居る貴女を愛したくてとも言わない。 言ったら最後、楓はそれどころでは無くなってしまうだろう。 ならば楽しみは最後に取っておいたほうが良い、との判断だ。 「楓ちゃん」 滴り落ちる汗の雫が数を増し、楓のはっきりと浮き出ている鎖骨に薄く溜まる。 もっとも、それは美兎のだけではなく、首筋から流れてきた楓の分も含まれている。 その部分へ、美兎は強めのキスをした。 キスの間、楓は声をあげないよう必死に口を手で抑えている。 それが彼女に残された僅かなプライドだった。 数十秒後。 彼女の白い肌に、痕が赤くはっきりと残る。 美兎は満足そうに眺めたあと、紅い証を撫ぜながら尋ねる。 「いいよね」 楓からの返事はない。 だが、口を抑えていた手を美兎の首の後ろへと回す。 いきなり痕を付けられたことへの反発心、これからへの期待、様々な感情で溢れた目をゆっくりと瞑った。 それが彼女に出来る精一杯の合図であり、声のない答えだった。 この前も、今も、その次も全て同じ答えだろう。 麦茶で満たされている二つのグラスの中で、氷が澄んだ音を立てた。

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